最後に「リッタの聖母子」こちらの制作は、ここまで進みました。

この作品1490年作、解説にはこう記されています。

ミラノのヴィスコンティ家が所有し、リッタ侯爵からロシア皇帝アレクセイ3世に買われてエルミタージュに移った。
こにときカンヴァスから板に移されて傷みがはなはだしい。そのためか、マティエールが平板で、レオナルドの仕上げの微妙さを欠いており、多くの学者によって弟子のボルトラッフィオの作ではないかと考えられてきた。
ただ、ルーヴルにある美しいプロフィル(下の写真)がこの女性の習作であることは疑いない。

おそらくレオナルドの下絵を参考に弟子が完成させたと言われている。何故なら、窓の外に広がる青空もきわめて美しいが、レオナルドの複雑な明暗を欠いている。ビザンティン的な荘厳と静けさをもつこの図柄は、複雑な明暗のかげりとともにある永遠記念的な静けさをもっており、きわめて高貴な聖母子像となっている。
ただ、ファクチュールの固さとレオナルド独自のスフマートの柔らかさを欠いていることが、弟子の仲介を想像させる。残った問題は、レオナルドがどの程度この作品の仕上げに関与していた、どうかということであろう。